懐かしい田んぼの景色から考える、日本と韓国のお米文化

ボクが長らく住んでいた福岡の田舎町では、周囲に田んぼが沢山ありました。農業が盛んな地域で、稲作も行われており、一般に6月には田植え、10月には稲刈りが行われます。

友人に半農家の人がいて、田植えや稲刈りを手伝ったこともあります。あの、泥に足を取られながらの田植え、秋の陽射しの中で響くコンバインの音。。。

韓国で見た田植え風景に、日本の懐かしさを感じた話

そして今、ボクが住んでいるのは韓国の地方都市。しかし、見慣れた水田の輝き、整然と並ぶ苗。思わず足が止まります。

日本の妹に写真を送ると「写真だけ見たら日本みたい」と返事が。まさにその通り。韓国も主食はお米。稲作はしっかり根付いています。

韓国語で「田んぼ」は「논 ノン」です。

韓国、田植え後の風景
日本ではありません(笑)

日本と韓国、稲作の違いって?

東南アジアでは長細くてパサパサした米が好まれるみたいですが、ここ韓国では日本と同じようなモチモチした米(ジャポニカ米)を食べます。

ボクが住んでいる地域は平地が多く、田んぼが広がっています。5月下旬にはほとんどの田植えが終わっていました。日本と比べると少し早い?

元・米農家の友人に聞いてみると、「福岡でも早い品種は5月の頭に植えるよ」とのこと。地域や品種によって時期に幅があるようです。

なるほど、日本と韓国の稲作に大きな違いはないということですね。

日本でお馴染みの「KUBOTA」と文字の入った農機が使われているのもよく目にします。

韓国の田んぼ5月
韓国の田んぼ 5月25日撮影
韓国の田んぼ6月
6月30日撮影

自分ではあまり”食”にこだわりがないと思っていますが、それでも、「もし美味しい米が食べられなかったらキツいなぁ…」と感じるのはやっぱり日本人だからでしょうねぇ。。。

ここ韓国でも美味しくご飯が食べれることに、農家の皆さんに感謝です!!


日本のお米の方が美味しい!?

以前、奥さんの中学生の甥っ子を連れて日本旅行をしたことがありました。甥っ子には初めての日本。

帰国後に彼にこう尋ねてみました。「日本で食べたもので、何が一番おいしかった?」彼は一瞬の迷いもなく、

「ご飯!」

お寿司でもなく、ラーメンでもなく、なんと「白ご飯」。

中学生の彼の口にも、日本のお米は衝撃的なほど美味しかったようです。

甥っ子に限らず、日本の米が美味いという感想を持つ韓国人は多いようです。


なぜ日本と韓国の米の味は違う?

韓国でも、日本と同じジャポニカ米(短粒種・もちもち系)が主流です。

日本産の品種、コシヒカリなども栽培されていますが、韓国で開発された品種もたくさんあり、海外でも高い評価を受けているものもあります。

品種そのものは、韓国米も決して劣っているわけではありません。なのに、「やっぱり日本のお米の方が美味しい」と感じる韓国人が多いのはなぜでしょうか?

調べてみると、大きく3つの違いが影響していることがわかりました。

① 品質管理の違い

日本では、収穫後のお米は低温貯蔵庫(温度15℃以下)で保管されることがあります。温度や湿度が高くなると米の劣化が早まるからです。玄米、精米後の温度管理だけでなく、最近ではモミの状態での温度管理を行っているところも増えているようです。また、精米時にも割れや砕けを極力減らし、粒のそろった美しいお米が流通します。※参考記事

韓国でも、低温貯蔵庫が使われることもありますが、その割合は日本よりも低いです。市販されているお米には割れた粒や砕けた粒が比較的多く含まれていることがあります。完全粒(割れや欠けのない形の整った米粒)の比率は日本より低いようです。完全粒の比率は炊いた米の味、食感に影響があります。 ※参考記事(韓国語)

また、「単一原料米」(日本)、「単一米」(韓国)の規準にもにも違いがあります。日本では、「単一原料米」と表示されている場合、産地・品種・収穫年がすべて同じで100%一致している必要があります。ところが韓国では、「単一米(단일미)とされていても、同じ品種が80%以上含まれていればOK。つまり、最大20%程は別の品種が混ざっている可能性もあるのです。※参考記事(韓国語)

またブレンド米(複合原料米、韓国では混合米⦅혼합미⦆と呼ばれる)の場合、日本では何をどれくらい混ぜているかを表示する義務がありますが、韓国ではそれはありません。もちろん”ブレンド米=まずい”という訳ではありません。しかし、管理のされ方が違うことが分かります。


② 生産の方向性の違い

日本の米農家は今、量より質を追求する方向へとシフトしています。そのため、米の「食味」や「香り」などを高めるための研究や努力が続けられています。

一方、韓国では今でも収穫量重視の傾向が残っているようです。

そのため、生産性を上げるために窒素肥料を多く使う傾向があります。窒素肥料を多く使うとたんぱく質の含有量が増え、生産量は増えるものの味が落ちる原因になるといわれています。※参考記事(韓国語)


③ ご飯に対する価値観の違い

日本では、伝統的にご飯が食事の中心にあります。

「ご飯の友」という言葉もあるように、おかずはご飯を美味しく食べるためのもの
美味しいおかずを食べると、「ご飯が進む」と表現しますよね。

でも、韓国でもご飯は大事ですが、どちらかというとご飯はおかずの引き立て役という感じ。

韓国の食道でとんかつを頼んでもご飯の量が少なくて、ちょっと物足りなく感じたことがありましたが、なるほど、これがその理由かと納得。

そもそも、消費者が求めるご飯の質が違うということですね。

とんかつのご飯の少なさに触れた記事「日本じゃない”日本食” とんかつ&うどん」という記事もご覧ください


韓国でもお米の品質向上が進んでいる!

しかし

近年では、韓国でも米の質を高める取り組みが進んでいます。

例えば、政府の指導で、お米の包装には以下のような表示が義務化されるようになりました:

  • 原料米の品種・生産年・精米日原産地
  • 完全粒の割合を表す等級(特・上・普通・等外)

精米の完全粒の割合は、日本では表示義務はありません。さらに、韓国ではタンパク質の含有量を表す等級(秀・優・未)を表示する取り組みもなされていて、2026年には表示が義務化されます。お米はタンパク質が少ない方が美味しいとされています。これも日本にはない表示です。※参考記事(韓国語)

こうした表示が消費者の意識を高め、生産者側もより質の高い米づくりを意識するようになってきています。近年では、ただの商品名ではなく、品種や産地を前面に掲げて販売するお米が増えてきています。


韓国での美味しいお米の選び方&美味しく炊く方法

日本でのお米の選び方と一緒で、表示をよく確認することで良いお米を選ぶことができます。

買うときに確認した方が良い項目

  • 品種(품종): コシヒカリやアルチャンミといった「品種名」か「混合」と表示。韓国では品種名が書かれた単一米の方が美味しいとされています。
  • 生産年度(생산연도): 少なくとも前年度に生産された米を購入するのが良い。
  • 精米年月日(도정년월일): 最近精米したものほど酸化が少なく、ご飯の味が良い。
  • 等級(등급): 完全粒(損傷のない米)含有率が高いほど優れた米。上から「特」(특)・「上」(상)・「普通」(보통)・「等外」(등외)で表示。それぞれの完全粒の割合は「特」が94%以上、「上」が85%以上、「普通」が65%以上で、「等外」はそれ未満です。等級が高い方が、炊いた後の味、食感が安定しています。
  • タンパク質含有量(단백질함량: 等級が高いほど美味しい。 「秀」(수)、「優」(우)、「未」(미)で表示。タンパク質の含有量は「秀」が6.0%未満、「優」が6.1~7.0%、「未」が7.1%以上(未検査を含む)です。タンパク質含有量の等級は現在(2025年7月)はまだ表示されていないことが多いです。2026年からは義務化されるようです。
こしひかり
こしひかり!
こしひかり 表示
利川米
米所として有名な利川市(イチョン)産のお米
利川米 表示
混合米
混合米値段は単一米より若干安い
混合米 表示

韓国のお米を美味しく炊くには

韓国関連の総合情報サイト“wow Korea” (ワウコリア)には韓国の米と日本の米の違い、韓国の米を美味しく炊く方法を紹介した記事がありました。

韓国のお米は日本のお米に比べて水分量が少ないらしく、日本のより少し多めの水で炊くか、水に1時間ほど漬けてから炊くと良いようです。

硬めのご飯が好きなボクが韓国のお米を美味く感じる理由は、この水分量のせいなのかもしれません。

韓国のお米 種類は?美味しく炊くには?【韓国】 | wowKorea(ワウコリア)
韓国でも日本と同じようにお米が販売されていますが、実は違いを理解して炊かないと炊き上がりに失敗します。

まとめ:これからもっと美味しくなる韓国のお米に期待!

韓国にお越しの際は、ぜひ、お米の味の違いも気にしてみてください。お米の新しい味を発見するかもしれませんし、改めて日本のお米の美味さに気付かされるかもしれません。

ボク自身は、今でも十分に韓国のお米を美味しくいただいています。

でも、韓国の生産者や政府が質の向上に向けて努力しているのを見ると、「これからもっと美味しくなるんじゃないか?」と楽しみになります。

みなさんの食卓にも、いつも美味しいご飯がありますように。。。


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