韓国に住んでいると、今まで日本で出会ったことのない食べ物に出くわすことがあります。
その一つが「チュオタン」(추어탕)。日本では聞いたことも見たこともない韓国料理でした。
「タン/탕」と名の付く韓国料理はスープ系(サムゲタン、ソルロンタンなど)の料理です。※ソルロンタンについては「韓国料理「ソルロンタン」(설렁탕)をご紹介!」という記事もご覧ください。
でもスープ系料理でも「タン」の付かない料理(ユッケジャンやスンドゥブチゲなど)もあります。
17世紀に、ドラマの主人公にもなった医師ホ・ジュンが完成させた医学書「東医宝鑑」(18世紀に徳川吉宗の命よって日本でも刊行)によると、薬用植物や薬効のある材料を熱湯で煎じて治療目的で飲むものを「湯/タン/탕」と呼ぶとのこと。
ですからチュオタンも滋養強壮に良いスープ料理なんです。
「最近ちょっと疲れてるでしょ?チュオタン食べに行こうよ!」みたいな感じで食べに行きます。
チュオタンってどんな料理?
チュオタン(추어탕)は、一言でいえばドジョウを煮込んだスープ料理です。
見た目はちょっと泥っぽい……いや、すごく茶色い(笑)のが特徴。
ドジョウをじっくり煮込んで骨ごと細かく挽いて様々な野菜を加え、調味料で味付けして煮込んだ料理です。ドジョウの形状がなくなるまで煮込むのが一般的ですが、形をそのまま残して煮ることもあります。
味噌、にんにく、すりごま、唐辛子などで味付けされることが多いようです。牛ダシのスープで煮込むこともあります。
ドジョウの生臭さを消すためにネギやエゴマの葉、山椒など香味のある野菜や香辛料が使われます。

韓国語でドジョウは「미꾸라지/ミックラジ」ですが、別名で「추어/チュオ」漢字で書くと「鰍魚」(もしくは秋魚)とも呼ばれます。それでこの料理は「チュオタン/추어탕/鰍魚湯」と名付けられています。
韓国でドジョウは魚偏に「秋」と書くことからわかる通り秋頃が旬の魚です。(日本では「鰍」は「かじか」と読み、主に別の魚を指すようです。)
ドジョウは秋になると味が深まり、チュオタンは以前は初秋に夏バテの回復食としてよく食べられていた料理でしたが、今では養殖や中国からの輸入があるので時期を問わずいつでも食べられる料理です。
栄養がすごい!チュオタンの健康パワー
チュオタンは栄養面ではかなり優秀なスープです。
- 高タンパク・高カルシウム・ミネラル豊富
- 疲労回復や肝臓を助けるタウリン
- 血圧や血糖を整えるDHA・EPA
- 骨ごと煮るのでカルシウムたっぷり
- ビタミンAで肌や粘膜にも良い
とくに昔は農作業で疲れた農村の人々が、ドジョウで元気をつけていたと言われています。韓方医学でも「気を補い、体を温める」とされていて、まさに“食べる薬”。
また中国宋王朝時代の書、西暦1124年に完成した「宣和奉使高麗図経(せんなほうしこうらいずきょう)」にチュオタンに関する記述があり、長い歴史を持つ料理であることも知られています。
日本でも古来より「うなぎ一匹、ドジョウ一匹」と言われ、ドジョウ一匹にはうなぎ一匹に匹敵する栄養があると考えれていたようです。
日本でドジョウ料理と言えば柳川鍋が有名です。
チュオタンの食べ方
薬味でコショウ、山椒、すりごま、にんにく、青唐辛子を余分に加えられるようになっています。一口味を見てから、お好みで薬味を使ってみてください。


ボクはすりごまとにんにくを大量投入、青唐辛子と山椒を少量加えるのが好きです。

少しスープを味わった後は、ご飯を投入します。それも好みです。ご飯を混ぜない方が好きな人もいます。

地域で違う!チュオタンのバリエーション
韓国では地域ごとに少しずつ味や具材が違います。
- 慶尚道(キョンサンド)式:すり潰したドジョウに青菜やワラビ、サトイモの茎などを入れて、最後に山椒の粉をふりかける。ピリッとした香りが特徴。
- 全羅道(チョルラド)式:味噌とゴマの汁でコクを出した濃厚スープ。唐辛子粉もたっぷり。
- ソウル式:牛骨スープをベースに、豆腐やキノコを加えて、ドジョウを丸ごと投入するタイプも。
いざ実食!チュオタンの味は…?
見た目は……茶色いドロッとしたスープ。中には青菜やネギ、唐辛子が浮かんでいます。
ドジョウがすりつぶされているので、小骨などのざらっとした食感かと思いきや、意外とまろやかな口当たり!すりごまとにんにくでコクとまろやかさが足されていて、そしてごまの香ばしい風味とエゴマの葉の香りが口に広がります。
そこに唐辛子のピリッとした刺激が加わって、後を引く美味しさ。ご飯を入れて食べても美味しいし、スプーンですくってそのまま食べてもOK。
「見た目はアレだけど……アリだな。」
正直な感想です(笑)。
お勧めしたいサイドメニュー!
チュオタンの店にボクが大好きなサイドメニューがあります。
ドジョウの天ぷら!
ぜひ見つけたら試して欲しいです。揚げたてを食べるのは最高です。
おかずとして少量無料で提供してくれる店もあります。
そのまま食べても一緒に出てくるタレをつけて食べても美味しいです。
ただ小骨があるので慎重に食べてくださいね。

お店の紹介!
いつ行ってもお客さんが多いソウル・江南(カンナム)の人気店「元祖原州チュオタン」(원조원주추어탕/ウォンジョウォンジュチュオタン)。ここにはちゃんとドジョウの天ぷらもあります。駅近くでアクセスも良い。

ソウルから大分離れていますが、大田(テジョン)広域市にはボクの大好きなチュオタンのお店があります。「김관식 추어명장/キムグァンシク チュオミョンジャン/キム・グァンシク 秋魚名匠」。ここはとんかつも美味しいです。テジョンに足を運ぶことがあればぜひ試してみてください。



韓国のスーパーでは常温で保管できるレトルトパックのチュオタンを買うことができます。お土産にも良いかもしれません。袋を開けて鍋に入れて温めればすぐに食べられます。電子レンジでも湯煎でもOK。

最後に:チュオタンは“挑戦する価値アリ”の一杯!
正直、最初はちょっとハードルが高く感じたチュオタン。
多少クセのある料理なので、韓国人でも嫌いな人もいるのだとか。
でも、食べてみたらその奥深い味わいに驚くかもしれません。
ボクには、今では大好きな定期的に食べたくなる韓国料理の一つです。
ちょっと疲れたな、元気が出ないなっていう時にはぴったりの一品。
韓国旅行や滞在中にちょっと通な韓国料理に挑戦したい人は、ぜひ一度お試しください。